§2. 内的二面性と言語学史
言語事象を研究してまずおどろくことは,話手にとっては,時間におけるそれらの継起は存在しないということである: 眼のまえにあるのは状態である. それゆえこの状態を理解しようとおもう言語学者は,それをうみだしたものを一掃し,通時態を無視すべきである.過去を抹殺しない限り話手の意識のなかに入ることはできない.歴史の介入は,かれの判断を狂わすだけである.アルプスの全景を画こうとて,ジュラの諸峰から同時に見渡したところで,意味をなさない.全景は,ただの一点から画くべきである.言語にしても同然である: ある一つの状態に身をすえないでは,これを記述することも,使用の規範を定めることもできない.言語学者が言語の進化を追求するときは,さながら眺望のずれをしるそうとて,ジュラ山脈を一端から他端へ移動する観察者に似ている.
Author: Soh
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