ソニーの動画再生ウォークマンについての日経記事

今日の日経新聞31ページに、ソニー「ウォークマンNW-A800シリーズ」についての記事がありました。「ヒットの舞台裏」という欄です。読んでいて、いまひとつしっくりこなかったので、ちょっと考えてみます。

記事の要旨:ソニーが3月に発売した「ウォークマンNW-A800シリーズ」の売れ行きが好調だ。動画再生に対応、音質を強化した。量販店でも動画再生を訴えている。ソニーによると、携帯音楽プレーヤーに対する消費者の不満は音質と充電池の持ち。NW-A800シリーズは、付属ヘッドホンも高音質。約30時間持つ。



ここでボクが着目したいのが、ソニーのスタンスです。「ソニーによると、携帯音楽プレーヤーに対する消費者の不満は音質と充電池の持ち。」携帯音楽プレーヤーというともはやiPodの独壇場ですので、ここはiPodと読み替えればよい。iPod は音質・電池の持ちが悪いとソニーは言いたいのです。なるほど、iPodに比べて新型ウォークマンの優位性を強調したいのでしょう。サラリーマンだったらそれでもいいかもしれないですね。とりあえず仕事した気になる。

しかし、ソニーはあえて根本的な問題に対して目をつぶっています。それはネット環境時代における音楽配信のあり方をみずから規定し、実現できていないことです。ソニーは mora を魅力的にすることを怠りながら、ハードウェア的なところにばかり目を向けている。しかし、それは本質から目をそらす行為だし、じっさいソニー社員も気づいているんだと思います。

ソニーがここまでハードウェアにばかり注目するのはなぜでしょうか。ソニーの経営幹部はある種のノスタルジーにとらわれているのだと思います。それはものづくりの姿勢です。ボクはNHK「プロジェクトX」が大嫌いです。「いいものを作れば売れるんだ」というある種の職人気質なところをフォーカスしすぎるのが大嫌いなのです。たとえばお寿司屋さんとかならいいかもしれない。おいしいお寿司を一生懸命にぎって、お客さんに食べてもらう。いいことです。ところが、インターネット時代、2000年以降、もっといえばナップスター以降の「ウォークマン」はスタンスが以前と違います。もっとシステム化されたなかに位置づけられているのです。ソニーは、いい商品をつくることが目的ではなく、いい音楽を聴いてもらえる環境をネット時代にどのように整備するかが目的なのに、目をそらしている。マーケットの変容を、意図的に無視しようとしている。それがSMEを傘下にかかえているからかどうか、わからないけれども。音質・電池はボクにいわせれば二の次です。

現場でのものづくりもむろん大事です。しかしより根本的には、システム設計/上流行程の発想がなくして、アップルやその他企業には勝てません。ソニーがもう勝負ついた、と思ってるならそれでもいいけど、けしてそうではないはず。

このエントリの最後に、もうひとつ気になったことを。

「調査会社BCN(東京・文京)によると、NW-A800シリーズのシェアは六月が六%、携帯音楽プレーヤー全体に占めるソニーのシェアも二六%と発売前の二月に比べて六ポイント強上昇した」


あれ、なんで突然「携帯音楽プレーヤー全体」の話になるの?
たとえばおなじBCNのサイトをみてみると、こんな風になっています。
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これ5月の携帯オーディオ(HDD)の母数だけど、この母数の中ではぜんぜん低いです。「携帯音楽プレーヤー全体」を持ち出す意図が不明だな。ものすごくミスリードする数字を日経は書いていると思う。BCNが「ソニーさんをよろこばしたれ」と思って書いているんじゃないかと邪推してしまいます。(もし根拠があるならすみません。)

繰り返しになりますが、ソニーはネット時代における音楽産業のあり方、システム化の方向性を自らつくりださないといけません。まるで社会保険庁のシステムトラブルといっしょです。ソニックステージCPがその回答であるならば、ソニーを応援する気は失せます。将来像を描けない、理念亡き経営者たちよ、去れ!

(ちょっと辛口のエントリになりましたが、ボクはソニーファンです。最初に触ったコンピュータはソニーのMSXだし、高校生になって買ってもらったカセット型ウォークマンに驚喜しました。いまつかってる携帯はW44Sです。そのソニーファンの「かわいさ余って憎さ百倍」ということでご了解ください)

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